今日の一曲 No.97:矢野顕子「雑踏」(アルバム「矢野顕子、忌野清志郎を歌う」より)

「今日の一曲」シリーズの第97回です。

今回は前回(第96回:2019/06/09記載)からの続編になります。

で、出来れば前回をお読みいただいた上での方が好いのですけれど。まぁ、でも、前回の話の流れを極簡単にご説明申し上げますと、・・・・それはある人からのご指摘を受けて、私は我が音楽活動におけるメンターとなり得る人物・存在を探すことになった。そんな折、私にとっては“命の恩人”でもある「Y氏」と「S女史」のお二人ご夫妻から推薦いただいたRCサクセションのアルバム「COVERS」を購入する際に、実は、ご夫妻がこれを推薦した理由を自分なりに解釈して、これとは別にもう一枚、追加して買ったCDがあった。・・・・といったところが前回でして、このとき、この盤については次回(第97回で)ご紹介する、とお約束申し上げたわけです。

そこで、お約束申し上げた通り、今回は追加して購入したこの盤とそこに収録された一曲をご紹介しながら、併せて前回の続編として、また諸々語らせていただこうと思います。

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《イントロダクション》

~前回(第96回)の内容からその一部を簡単におさらい~

 

今年の春先のこと。

ある人からのご指摘を受けて、私は、我が音楽活動においてそのモデルとなる人物、あるいはメンターとなり得る存在を、見つかるだろうか、といった疑念も少しありながらも、他人様からの折角のご厚意であると受け止めて、念のため、あらめてこれを探してみることにしたのだった。

そして、このことについては、ご指摘してくださった方とは別に、私のことを良く知ってくれている、私にとっては“命の恩人”とも言うべき人にも相談をした。

それが「Y氏(仮称)」と「S女史(仮称)」のお二人、ご夫婦だ。

Y氏にメールでその旨を伝えると、珍しく、直ぐに返信があった。

Y氏からのメールには、5本ほどの動画を視聴することの他に、ある書籍を読むようにとの指示があった。

また、こんなことは実に珍しいのだけれど、続けて翌日にもY氏からメールがあった。今度はS女史からの伝言を伝える内容だった。

S女史からの伝言を受けて、私は、それから数日に内にCDショップへと向かった。

 

数多くのCDが並べられたラックを眺めながら、ゆっくりと目的のもを探して店内を歩くも、お目当てのRCサクセションのアルバム「COVERS」が置かれたラックの前へは簡単に辿り着いた。

手に取って、ジャケットやら帯を注意深く見つめて間違いのないことを確認する。

「よし、OKだ」

心の内で呟いたつもりだったけれど、もしかしたら、独り言のように漏れていたかも(汗)。

CDを手に持ったまま、幾らか顔を持ち上げて店内を見渡した。

我が脳内ではこの少し前からある考えがあって、このときはこれを反芻していた。

それはS女史からの伝言にあった“「COVERS」を推薦する理由”を想い返してのことで、“そうであるのなら”、忌野清志郎の作品を他のミュージシャンがカバーしたものを聴いてみるのも有りなんじゃないの? と。

 

《もう一枚のCD》

ところがだ、忌野清志郎の作品をカバーしているミュージシャンもまた多くいることは重々承知していたものの、それらが収録された盤となると、さて・・・、とまぁ、考えていた割には、迂闊にも、この日はこうしたことを調べた上でCDショップに出向いたわけではなかった。

ボーっと店内を見渡しながら、が、脳裏では恐らく様々考えを巡らしていたのだと想う、暫くすると、またある出来事を想い返すに至った。

数日前、やはり、Y氏からのメールに書かれたその指示で、動画サイトの幾つかをチェックしているうちに、寄り道をするような感覚でたまたま偶然にある別の動画サイトを覗いてのことだった。

「あぁ〜、これこれ!・・・大泉洋(さん)と原田知世(さん)が主演した映画のエンディングでも流れていた曲」

と、これも心の内の声ではあったはずだけれど、少々はしゃいだ感情が混じってのことだったような。覗いて観たそれは、忌野清志郎と矢野顕子の二人のコラボレーション・ライヴを映した動画だった。

矢野顕子の「ひとつだけ」という曲を、矢野顕子はピアノを、忌野清志郎はブルースハープを伴って、二人で歌い上げている映像の、これを想い出したのだった。

「あぁっ、いいかも!」

と、このときこそ確実に、独り言として声に発したと思う。

それから、五十音順にCDラックを辿って「ヤ」の周辺を見渡した。

「おぉ、やっぱりありましたね!」

それは、もう、2013年にはリリースがされていたCDだった。

でも、このとき、この一枚へと、辿り着いたこのことが、何故か、とても嬉しく感じた。

 

《会いたい人に贈り届けたい?》

そんなわけで、「今日の一曲」シリーズの第97回として、今回、97枚目にご紹介する盤は、矢野顕子のアルバム「矢野顕子、忌野清志郎を歌う」だ。

アルバム・タイトルそのまま、忌野清志郎の作品と忌野清志郎が関わった楽曲を、矢野顕子ならではのアレンジでカバーした音たちが全11曲収録されている。

「500マイル」や「デイ・ドリーム・リバー」など忌野清志郎がもともと洋楽曲をカバーした作品を更に矢野顕子がカバーしたもの、「誇り高く生きよう」、「多摩蘭坂」、「恩赦」など忌野清志郎オリジナルの作品を矢野顕子がカバーしたもの、これらが収められている。もちろん、「ひとつだけ(矢野顕子 with 忌野清志郎)」もアルバムの11曲目に収録されている。

 

さて、今回も悩んだよぉ~。

この中からどの一曲を選んでご紹介するかを。

ただ、このアルバムを聴く度に不思議と徐々に染み入ってくる曲があった。

 

Hum(Hey)~ 会いたい人がいるんだ

どうしようもなく ・・・

会いたい人がいるんだ

 

このフレーズを聴いて、聴くたびに泣きそうになる。

これもオジさん化なのか、最近は明らかに涙腺が緩みがちだ。

無性に誰かに会いたい、と自分自身にもその誰かが何処かに居るような気持ちにさせられる。

「また会えるかなぁ~」

「また会ってみたいよなぁ~」

と、そのうち無意識にも、実際に“その誰か”を想い出している。

・・・なぁ~んてね。

 

アルバムの5曲目に収録されている「雑踏」という曲だ。

原曲は、忌野清志郎の作詞・作曲、三宅伸治も加わって創られた作品だ。

 

今年の春先は花粉症のことも影響して、我がライヴ活動については控えていた。

外出することも少なく、殆んどの時間を、独り、部屋で過ごしながら、ある作業を進めていた。

だからなのだろうか、そんな心境とオーバーラップしたのかも知れないのだけれど、聴こえてくる音たちが妙に胸奥に染み入ってくるのだった。

 

雨の音で 歌が作れたなら

かわかないうちに 君に贈らなくちゃ

雲にのせて 君の傘の上に

・・・・

 

独りで進める作業のその間は、

「贈り届けたい!」

「必ず贈り届けなくては!」

と、そんな少々欲張った思いも自身の内側にはあって、常にこれを抱えながら、でもこれを抑えながら、曲創りをして、ライヴを企画して、歌い演奏するための準備をして、もしかしたらこんな思いとも重なって、「雑踏」というこの一曲から発せられる音たちがこの身体へと余計に入り込んできたのかも? ・・・などと、オジさんがガラでもないな(笑)。

 

Hum(Hey)~ 会いたい人がいるんだ

どうしようもなく ・・・

会いたい人がいるんだ

 

もちろん、“音たちの力”だと感じる。

矢野顕子のピアノ・アレンジ、矢野顕子独特の歌声と歌いまわしがあって、またそこに、忌野清志郎独自のメッセージ性とそれを届けるエネルギーが息づいているからで、これらが共鳴し合ってこその“音たちの力”なのだと。

 

そして、いま我が脳裡では、“会いたい人がいるんだどうしようもなく”のこのフレーズが、ぐるぐると巡りながらいつまでも繰り返される。

 

《出会った全てが大切なものに》

さあ、我が音楽活動におけるモデルとなる人物、またはメンターとなり得る存在、これを探り捜すのもここまでだ。

前回も書かせていただいたけれど、この機会にかなりの時間を割きながらも、結局のところ、私、愛間純人が進もうと想い描いている音楽活動に照らし合わせては、そのモデルまたはメンターとなり得る人物や存在のこれを特定して挙げるまでには至らなかった。その理由は、Y氏とS女史が当初から見立てたその通りだったというわけなのだろう。

そうして考えると、むしろ、幼少の頃から現在までに聴いた音楽とそのミュージシャンたちの存在、また実際に各地のライヴハウス等を訪れたときにそこで聴いた音楽とこれを歌い楽器を奏でる音楽仲間たちの生き様、これらを含めて、私が生活の中で触れ合い培ってきたその全てが欠かせない大切なものとなって、自ずと、愛間純人という人間の思考から行動を突き動かしているように思える。更には今後も突き動かしていくように思う。そりゃぁ理屈を謂えば当然であるけれど、実感としてそう思う、ということだ。

勿論、ここのところの、「武満徹」と「忌野清志郎」の二人を辿りながらの日々も、これはこれでなかなか面白かった。これからも心の内の何処かでは彼ら二人を感じながら音楽と関わっていくと思う。

そう、少なくとも、前回の終盤に書いたことだけは終生変わらず持ち続けたいものだ。またそうなるように音楽活動を続けて、生き続けたいと思う。

エヘ、一寸真面目に語ってみた。

 

第97回の「今日の一曲」は、前回からの続編として、忌野清志郎を辿るなかで出会った一枚の盤、矢野顕子のアルバム「矢野顕子、忌野清志郎を歌う」より「雑踏」をご紹介しつつ、諸々語らせていただいた。

 

長文をお読みいただき、誠にありがとうございました。

前回をお読みでない方には、申し訳ありません、お読みになりにくいところが多々あったかと存じます。

前回から引き続きお読みいただいた方には、恐縮な思いとともに、重ねて深く感謝申し上げます。ありがとうございました。

 

*前回に続き、「Y氏」と「S女史」ご夫妻には心より感謝申し上げます。