番外編:その後の「フースラー・メソード」~「救ってくれたのは『フースラー・メソード』」の続編~

今回、番外編としてここで語る内容は、2019年11月28日に本ブログ内に載せた、「番外編:救ってくれたのは『フースラー・メソード』」これの続編です。

私めがこのボイストレーニングを取り入れたのは、丁度2年前のこと。つまり、これに取り組んでから2年が経過したというわけで、そろそろ経過報告も兼ねて、「フースラー・メソード」なるボイストレーニングのこれを私なりの解釈を含めて諸々語らせていただくのも有りかなぁ?などと、そんなふうに思いまして。

そこで、今回は、“その後の「フースラー・メソード」”と題して、ここでの話を進めさせていただきたく存じます。

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《イントロダクション》

今回は、2019年11月28日に本ブログ内で公開した「番外編:救ってくれたのは『フースラー・メソード』」の続編として、これを語らせていただきたく思う。

ぅんなことで、先ずはその2019年11月28日のブログをお読みいただいた上で・・・と申し上げたいところではあるのだけれど、だからって、これを読む人はなかなか居ないと思うんだよねぇ~。第一に面倒だもの、ね。

そこで、ここでは、イントロダクションとして、その「番外編:救ってくれたのは『フースラー・メソード』」で語らせていただいた内容のなかでも肝心と思われる部分のそこだけを抜粋して、これをお復習いするような感じで進めていこうと思う。

 

私が「フースラー・メソード」と謂うボイストレーニングのこれに辿り着いた経緯は、「フースラー・メソード」の前に、“これと異なる理論と方法のボイストレーニング”によって声帯機能をダメにしてしまった、これがそも始まりで。ぃやね、まったく歌えなくなってしまったのだよ。ホント、そのときは絶望的に思えたほどで。それで、詳細は省くけれど、“人間が本来もっている声帯機能を回復させる”というその理論と手法にしたがったボイストレーニング、「フースラー・メソード」へと辿り着いたのが、最初だ。

私の場合は、武田凡声(Takeda Bonjo)著、「フースラー・メソード入門(日本実業出版社)」というDVD付きの本をきっかけに、これを進めていった。

すると、「フースラー・メソード」を取り入れてから5日目には声もそこそこ出て、5~6分程度なら曲も歌えるようになった。2週間も続けると、そのダメにしてしまった喉や声の状態はすっかり良くなって元通りに…、いや、元より好くなっていたかも。

 

あっ、私が何者であるのか? これについても一応申し上げておくと、ま、“何者のであるのか?”のこれは自分でも分からない。恐らく、何者でもない。謂えるのは、49歳になってから音楽活動・ライヴ活動を始めたバカ者だ、ということのそれだけだ。現在はそこから更に10年以上が経過している…還暦っていうのを迎えたらしい…ってんだから、アハハ…、人生とはまさに何であるか、だ。おっとそんなことは、ここでは余計だったな。

 

さて、2年前に語った、その「番外編:救ってくれたのは『フースラー・メソード』」で私が伝えたかったこと、とは?

私が思う大切なことの一つ目。ボイストレーニングは、これを効率的に“How to 的”に捉えて、方法ばかりを真似するのは危険だ、ということ。確りと、そのボイストレーニングの根本にある理論、何故その手法(トレーニング方法)を用いるのか、とこういったことを理解して進めること。

私が思う大切なことの二つ目。「フースラー・メソード」は、先にも記した通り、“人間が本来もっている声帯機能を回復させる”というこれに基づいた理論から成り立っているボイストレーニングである、ということ。①声帯そのものがその機能を果たすためにある「声帯筋」、「輪状甲状筋」、「斜・横披裂筋」、「外側輪状披裂筋」、「後輪披裂筋」と、②声帯の機能を支えるために声帯の周辺にある「胸骨甲状筋」、「甲状舌骨筋」、輪状咽頭筋」、「茎突咽頭筋」、「口蓋筋群」という、この①と②を“バランス良く”かつ“全てを強化”するためにある手法で・・・、医学や解剖学、あるいは脳科学などによる科学的な研究と、もう一方では、民族音楽、芸術史・芸能史なども紐解きながら、これらそれぞれにある個別的な成り立ちを、総合的な繋がりのある理論および正しい手法へと編み上げていったメソードである、というこれをきちんと理解しておくこと。

ちなみに、「フースラー・メソード」と、ハリウッドを中心に広まっていった、また現在においても多くで取り入れられているボイストレーニングのこれとは、一見、“How to 的”なその手法は似ているけれど、根本のところでの理論等考え方からすると両者は多くの点で異なる、こうしたことも理解しておく方がイイかも。

私が思う大切なことの三つ目。何よりも、焦らないこと。自分自身の身体、自分自身の心の持ち具合、これら自身の状態とちゃんと向き合いながら日々進めていくこと。

ってなところかな。なぁんて、ちょっと偉そう? 如何にも分かった風な感じで語っているけど、当時は、誰よりも自分に向けて、普段からの自分に言い聞かせるつもりでこれを書いたのだよね。

 

あとは、フースラー・メソードで用いる基本の発声法を大凡のイメージで紹介した、これもここに載せておこう。但し、読者の皆様には、ここに表現するイメージのこれだけを頼りに発声を試すなどそのようなことは、決してしないでいただきたい。くれぐれもお願いする。

 

【アンザッツ・メソード、7つの発声法】

1ー①.志村けんさんのバカ殿をイメージ:「ミンミンミンミン・・・」、「ミンミンミン、ミィ~~ン・・・」

1ー②.怪しい意地の悪い笑いをイメージ:「ヒッ、ヒッ、ヒッ、ヒッ、ヒィ~・・・」

2.歌のお兄さん・お姉さんのような爽やかな笑いをイメージ:「ハッ、ハッ、ハッ、ハァ~・・・」

3a.中尾彬さん、あるいはオペラ歌手の、低音を効かせたやや太い声のイメージ:「モァあ~~~~・・・」

3b.藤山一郎さん、美輪明宏さんのような、3a.のやや太い感じを残しながらも、これよりは軽やかに柔らかな声のイメージ:「ファあ~~~~・・・」

4.ミッキーマウスのようなイメージ:「フぅ~~~~・・・」、「ホぉ~~~~・・・」

5.ゲゲゲの鬼太郎(テレビ・アニメ版)に出てくる“目玉おやじ”のようなイメージ:「ゥい~~~~・・・」、「ヒぃい~~~~・・・」

6.淡谷のり子さんのようなイメージ:「チャぁあ~~~~・・・」

 

*1.2.3a.は、チェストボイス(地声)と言われるその範囲内で発声するトレーニング

*4.5.6.は、ファルセット(裏声)と言われるその範囲内で発声するトレーニング

*3b.は、チェストボイス(地声)にファルセット(裏声)を僅かにブレンドした感じの、ミックスボイスとも言われるこれにもやや近い感じ(=決してミックスボイスではなく、チェストボイスの範囲内)の発声で行うトレーニング

(*以降、「アンザッツ・メソード」という言葉のこれについては、「アンザッツ」と略して表記させていただく)

 

【吸気性(=息を吸いながらする)、6つの発声法】

○アンザッツの1ー①.を吸気性発声で行う:「ぅいぁ~~~~・・・」、「ヒぃやぁ~~~~・・・」

○アンザッツの3a.を吸気性発声で行う:「モぅあ~~~~・・・」

○アンザッツの4.を吸気性発声で行う:「フぉ~~~~・・・」、「ホぉ~~~~・・・」

○アンザッツの5を吸気性発声で行う:「フぃい~~~~・・・」

○シュナル(極低音)・・・息を吸いながら、ドアがゆっくりと開くときの“きしむような音”のそれをできるだけ低い音で出す(映画「呪怨」の俊雄くんのような気味の悪い感じ):口の形は「ア」を発音するときと同じ、「ぅア・・・(但し、無声音的)」

○やや高めの音域が混ざったシュナル:上記のシュナルよりも軽い感じの音。息を吸いながらドアが開くときの“きしむような音”のそれを中音域かやや高めの音域で出す:口の形は「ア」を発音するときと同じ、「ぃア・・・(但し、無声音的)」

 

*吸気性発声について、私の場合は、最初、さんま(明石家さんま)さんの、引き笑い「ヤぁ、ハァハァハァハあ~」を真似してみることから始めてみました。

 

【ガム(ノイズ発声の一つ=ダミ声風、桑田佳祐さん風な声)、3つの発声法】

○アンザッツの1ー①.をダミ声風(=咳払いをするようなイメージで発声し始めるのがコツかも)にして発声する:「ディドリン、ディドリン、ディドリン、・・・ィい~~~~・・・」

○アンザッツの3a.をダミ声風にして発声する:「モぁあ~~~~・・・」

○アンザッツの5.をダミ声風にして発声する:「ぅィい~~~~・・・」、「フィい~~~~・・・」

 

とまぁ以上、全部で16種の発声法が、「フースラー・メソード」で用いる基本だ。

 

で、私の場合は、始めてから最初の2週間くらいは、「アンザッツ・メソード、7つの発声法」だけを。3週間目くらいからは、「吸気性、6つの発声法」のうちアンザッツの1ー①.、3a.、4.、5.の4つを吸気性にして発声する方法と、「ガム、3つの発声法」もここに加えて進めていった。トレーニング時間は全部で7~8分といったところだ。

1ヶ月ほどが経過すると、更に、アンザッツの1ー①.と1ー①.の吸気性発声、アンザッツの3a.と3a.の吸気性発声、アンザッツの4.と4.の吸気性発声、アンザッツの5.と5.の吸気性発声、それぞれ、これを素早く交互に発声する「カタジャック」も取り入れた。それでもトレーニングの時間は先のこれに1分ほど増えた程度だ。

 

とまぁそんなわけで、2019年11月28日のブログに公開した「番外編:救ってくれたのは『フースラー・メソード』」の内容を極々簡単にまとめて謂うと、こんなところになるかと。

 

では、今回の本題へ。

 

《2年間、一日も休まず?》

「フースラー・メソード」に取り組み始めてからは、この2年間、“ほぼ休まず”トレーニングを重ねてきた。

ん、“ほぼ休まず”とは?

つい最近のことだ。2021年8月下旬から9月中旬に掛けての3週間ほど、どうしてもトレーニングを中断せざるを得ない状況があって、ぅん~残念、この間だけ、トレーニングをお休みしてしまったんだよねぇ。

この間の外は、毎日欠かさず、約2年間、「フースラー・メソード」に取り組んだ。

 

先の《イントロダクション》に示したトレーニングの内容は、2019年11月3日頃から約1ヶ月の間で私めが試したことで、トレーニング・メニューとしてはこれとほぼ同様に・・・行う発声法の順番を入れ替えたりはしたけれど・・・、そのまま3ヶ月間ほど続けた。

 

4ヶ月目からは、「カタジャック」のうちに入るのかな? 「ビンギ・ダブダ」というトレーニングも加えた。

 

【ビンギ・ダブダの仕方】

これは、「ビンギ」という言葉をアンザッツの1ー①.のイメージで発声した後、直ぐに、アンザッツの4.の吸気性発声(「フぉ~」)をして、またこの直ぐ後に、「ダブダ」という言葉をアンザッツの1ー①.のイメージで発声する、これを交互に繰り返し行う、というやり方だ。発声を交互に切り替えるそれは、初めのうちは慌てずゆっくりめに、徐々にテンポを速めていくのがコツ。

つまりは、「ビンギ(アンザッツの1.)、フぉ~(アンザッツの4.の吸気性発声)、ダブダ(アンザッツの1.)、フぉ~(アンザッツの4.の吸気性発声)、ビンギ(アンザッツの1.)、フぉ~(アンザッツの4.の吸気性発声)、ダブダ(アンザッツの1.)、フぉ~(アンザッツの4.の吸気性発声)、・・・」といった具合になる。

同様に、もう一つ。これを、アンザッツの1.と、アンザッツの5.の吸気性発声(フぃい~)で行う。

つまりは、「ビンギ(アンザッツの1.)、フぃい~(アンザッツの5.の吸気性発声)、ダブダ(アンザッツの1.)、フぃい~(アンザッツの5.の吸気性発声)、ビンギ(アンザッツの1.)、フぃい~(アンザッツの5.の吸気性発声)、ダブダ(アンザッツの1.)、フぃい~(アンザッツの5.の吸気性発声)、・・・」といった具合になる。

 

ってな次第で、約1年が経過するまでは、ここまでに紹介した発声法をトレーニング・メニューに、これを続けた。

 

ところで、声帯や声帯周辺のこれに関わる筋の状態は日々変化していくわけで。自身のその状態を認識するそれは重要だなぁ、と感じる。ただし、日常生活のでの過ごし方によっても、ある日においては発声しにくかったそれが翌日には発声しやすくなっていたり、その逆もあったり、とまぁそんなであるから、これを一々一つひとつを神経質に受け止めるのは良くないように思う。要は、自身の状態それだけを“ただ認識する”、これが大切なのではないかと。

だから、もしもその日に発声しにくい発声法やトレーニング方法があれば、それは短めにして終えてしまうのが、どうやら好いようなのだ。「上手くいかないなぁ」なんて思って何度も繰り返し試そうとしたりする、それは反ってよろしくないようだ。

尤も、私の場合、「フースラー・メソード」を始めて3ヶ月もすると、新型コロナウイルス感染のこれの影響で、ライヴ活動の一切を休止せざるを得なくなったものだから、謂ったら、自分の日々の体調やら喉・声帯の状態を確かめるには、結果、これが好かったのだよね。毎日、焦らず、ゆっくり、丁寧に進めていくことができた。「どの発声法のトレーニングを、どういった順番で、どれくらいやればイイのか」など、ライヴもないから怖がらずに思い切って色々と試すことができた、というわけなんだ。

ま、生活は厳しくなるばかりだったけどね。だからって悪いことばかりじゃぁなかった、ってことかな。

 

《メニュー、大凡の骨格》

さて、ここからは、1年を経過した後の、また現在において、私めが日々行っているトレーニング・メニューのこれについて、あれやこれや語っていこうと思う。

が、先ずは、そのトレーニング・メニューの内容からご紹介しよう。実際にトレーニングを行うときのその順序通りに紹介していくぞよ。

 

【ウォーミングアップ:10分~11分】

1)アンザッツの4.と5.を行う。…出しやすい音域・音程で、また時折、これより僅かに高めの音域や低めの音域も試しながら、あまり長く伸ばすこともなく、これを少しずつ発声する。例えば、アンザッツの4.を40秒~60秒ほど掛けて少しずつ何回かに分けて発声したら、こんどはアンザッツの5.を15秒~20秒ほど掛けて、これも少しずつ何回かに分けて発声するといった具合。私の場合、これを、途中、シャドーボクシングの真似ごとみたいなことをキックする動作も入れながらしてみたり、太もも周辺やお尻の周辺の筋膜を軽く手のひらで叩いたり、あるいは、肩甲骨の辺り意識して肩をゆっくり回したり、と、こうして身体全体を温めながら繰り返して5~6セットほど行っている。・・・全部通しての時間は、およそ7分くらい。

 

2)アンザッツの1ー①.を行う。・・・先ずは出しやすい音域の、或る音程のこれを一定に保って発声する。1回で発声する長さは8秒くらいだろうか。これを何度か繰り返す(1分程度)。続けてこれを、こんどはこれよりも半音か一音低くした音程で行う(20秒程度)。次に、最初に発声した音程に戻してこれを伸ばし始めたら、滑らかに低い方の音域へと降下する。・・・「ミンミンミン、ミィい~~↷」といった感じだ。これを2度3度繰り返す(30秒程度)。再び、最初の音程のこれを一定に保って発声する(10秒程度)。そしてもう一度、一定に保って発声した音程のこれを伸ばし始めたら、こんどは滑らかにやや高めの音域へと上昇しながら発声する。・・・「ミンミンミン、ミィい~~↺」といった感じだ。これも2度3度繰り返す(30秒程度)。尚も続けて、更には、最初に発声した音程のここから、適宜、やや高めの音域へと滑らかに上昇したり、低い方の音域へと滑らかに下降したりを繰り返す(30秒程度)。…全部通しての時間は、およそ3分くらい。

 

*「滑らかに・・・下降」、「滑らかに・・・上昇」というのは、音程(音階)を取って、半音ずつ下げたり上げたりする階段的な音程の移り変わりを謂うのではなく、音階など気にせずに、「↷」または「↺」といった矢印のイメージで、あるいは、自動車やバイクがエンジン音を鳴らしながら近づいて来ては通り過ぎて行くときのような、ドップラー効果による、そんな連続的な音程の移り変わりを謂っている。(分かりにくいかな?)

 

【トレーニング・基本編その1:17分~18分】

私の場合、ウォーミングアップを終えると、先ずは鼻をかむ、のだよね。鼻腔内をすっきりさせておきたくて。アハハ。

さぁ、トレーニング開始だ。

 

1)アンザッツの1ー①.を行う。…発声しやすい音域を中心に、ウォーミングアップのときと同じ要領で、時折、低い方の音域へと下降したり、少し高めの音域へと上昇したり、とこうしたことも混ぜながらこれを行う。…全部通しての時間は、およそ1分~1分半くらい。

 

2)アンザッツの1ー②.を行う。…発声しやすい音域を中心に、ここに時折、少しだけ、高めの方の音域や低めの方の音域も混ぜながら、これを行う。…全部通しての時間は、およそ30秒くらい。

 

3)アンザッツの2.を行う。…発声しやすい音域を中心に、時折、少しだけ、高めの方の音域や低めの方の音域も混ぜながら、これを行う。…全部通しての時間は、およそ30秒くらい。

 

4)アンザッツの3a.を行う。…先ずは出しやすい音域・音程でこれを発声する(1分程度)。次は、発声しやすい音程のここから半音ずつ音程を下げていくのだけれど、これ、同じ音程での発声を3回繰り返した後に4回目の途中で次の音程(半音下の音程)へと移る、そんな要領で進めていく。自身が現時点で出せる最低音のその音程まで下りたら、一旦休憩する(ここまで5分程度)。30秒ほど休憩しながら全身をリラックスさせる。再び、出しやすい音程で発声する(20~30秒)。こんどは、発声しやすい音程のここから半音ずつ上がっていく。これも同じ音程での発声を3回繰り返してから4回目の途中で次の音程(半音上の音程)へと移る。地声で出せる最高音(声が裏返ったりしない高さ)の音程まで達したら、そこからは半音ずつ下がっていって出しやすい音域へと、そのまま先と同様に低い方の音域へと下がっていく。自身が出せる最低音のその音程まで下りたら、そこで終了。・・・全部通しての時間は、およそ12分~13分間くらい。

 

*「半音ずつ・・・」と記してはあるけれど、ここでも半音間の音の移り変わりのそれは、階段的ではなく、先にも述べた「滑らかに・・・」といった要領のこれと同じ方法で音程を移動する。これは、これ以降に示すものについても同じ、とご理解いただきたい。

 

5)アンザッツの4.を行う。…先ずは出しやすい音域・音程でこれを発声する(20秒程度)。次に、出しやすい音程のここから発声を始めて半音だけ滑らかに下降する。続けて直ぐさま(ブレスをして)、下降したところの音程のここから一音半上の音程であらためて発声を開始し、ここから一音半だけ滑らかに下降する。つまり、先の下降したところの音程まで下がる。つまり、「フぅ~↷(半音だけ下降)、素早くブレス、↗(下降したその音程よりも一音半上の音程からあらためて…)フぅ~↷(一音半下まで下降していく)」といった具合。これで1クール目が終了。2クール目は、1クール目の最後の音程のそこから発声を始める。あとの、半音下降、直ぐさまその一音半上の音程から発声して一音半下降する、というそれは同じ。こんなふうにしてクールごと半音ずつ下がっていく。これを次々繰り返していって、ファルセットで発声するのが難しくなったらそこで止める。・・・全部通しての時間は、およそ1分くらい。

 

6)アンザッツの5.を行う。出しやすい音域内でこれを発声する。 ・・・全部通しての時間は、およそ20秒くらい。

 

7)アンザッツの6.を行う。…先ずは出しやすい音域・音程でこれを発声する(15秒程度)。次に、少し高めの音程のここから始めて、ここから半音ずつ順番に音程を下げて発声する。・・・「チャぁあ~~~・・・」、(半音下げて)「チャぁあ~~~・・・」、(更に半音下げて)「チャぁあ~~~・・・」・・・といった具合。これを繰り返していって、ファルセットで発声するのが難しくなったらそこで止める。・・・全部通しての時間は、およそ40秒くらい。

 

*ビブラートについて・・・上記「トレーニング・基本編その1」の1)、4)、5)、6)、7)は、発声したら、息が続く無理のない範囲内で、これを先ずは真っ直ぐに伸ばす。そろそろ息が終わるかなぁ、と感じたらビブラートを軽く掛けて終える。ビブラートの揺れの度合いやスピードに関しては、あまり意識せず、また極端なものにもせず、自然に行う。これは応用編のトレーニングでも同様。

ただし、上記の7):アンザッツの6.を行うときだけは、発声の最初から終わりまで、ゆったりとした、やや揺れの大きいビブラートを掛ける。終える少し前になって、ビブラートの揺れを僅かに速めていく。

 

【トレーニング・基本編その2:2分~3分】

1)ガム、アンザッツ1ー①.風を行う。・・・先ずは、「ディドリン、ディドリン、ィい~~~・・・」と言いながら、これを出しやすい音域内で発声する。その後は3~4回に分けて、少しずつ低い方の音域へと下がっていきながらこれを発声する。要は、出しやすい音程で「ディドリン、ディドリン、ィい~~~・・・」と発声した後、少し音程を下げて「ディドリン、ディドリン、ィい~~~・・・」と発声、また少し音程を下げて「ディドリン、ディドリン、ィい~~~・・・」と発声、といった具合に進めていく。無理な低音で発声する必要はない。・・・全部通しての時間は、およそ30秒くらい。

 

2)ガム、アンザッツ3a.風を行う。・・・「モァあ~~~・・・」を低い方の音域で発声。但し、無理なく十分に発声が可能な低音域でこれを行う。2回ほど繰り返す。・・・全部通しての時間は、およそ15秒くらい。

 

3)ガム、アンザッツ5.風を行う。・・・「チャ、チ、チュ、チェ、チョ」、「ちぇんちぇい、おはようごちゃいまちゅ。よろちくおねがいちまちゅ」などのことを言いながら発声する。発声しやすい音域で行う。・・・全部通しての時間は、およそ15秒くらい。

 

4)吸気性4.風を行う。・・・《イントロダクション》の「吸気性、6つの発声法」に記したその要領でこれを発声する。「フぉ~~~~・・・」といった具合。やや高めの音域で一回、やや低めの音域で1回。・・・全部通しての時間は、およそ15秒くらい。

 

5)吸気性3a.風を行う。・・・先ずは自身が出せる無理のない音域内で、が、可能な限り低音域で、《イントロダクション》の「吸気性、6つの発声法」に記したその要領でこれを発声する。「モぅあ~~~~・・・」といった具合にこれを2度繰り返す(15秒程度)。次に、吸気性3a.風のこれを、「ぅう~、ぅお~、ぅあ~、ぅえ~、ぅい~」と言って発音するこれを2度繰り返す(15秒程度)。更にこんどは、「モあっ、モあっ、モあっ、モあっ、・・・」といった具合に一つひとつを短く発音しながら、発音するその度に、低い方から徐々に高い方の声へと上昇させていく。これも2度繰り返す(15秒程度)。・・・全部通しての時間は、およそ1分くらい。

 

6)シュナル(極低音)を行う。・・・《イントロダクション》の「吸気性、6つの発声法」に記したその要領でこれを発声する。口元は「ア」の形。息を吸いながら、ドアがゆっくりと開くときの“きしむような音”のそれをできるだけ低い音で出す。・・・およそ8秒くらい。

 

7)やや高めの音域が混ざったシュナル・・・《イントロダクション》の「吸気性、6つの発声法」に記したその要領でこれを発声する。口元は「ア」の形。息を吸いながら、ドアが開くときの“きしむような音”のそれを上記のシュナルよりも軽い感じの音にして出す。・・・およそ8秒くらい。

 

8)吸気性1-①.風を行う。・・・《イントロダクション》の「吸気性、6つの発声法」に記したその要領で発声する。「ヒぃやぁ~~~~・・・」といった具合。・・・およそ5秒くらい。

 

9)吸気性5.風を行う。・・・《イントロダクション》の「吸気性、6つの発声法」に記したその要領でこれを発声する。「フぃい~~~~・・・」といった具合。・・・およそ5秒くらい。

 

【トレーニング・応用編:4~5分】

1)アンザッツの1ー①.と吸気性4.風とで「ビンギ・ダブダ」を行う。・・・《2年間、一日も休まず?》の【ビンギ・ダブダの仕方】に記したその要領でこれを発声する。「ビンギ(アンザッツの1.)、フぉ~(アンザッツの4.の吸気性発声)、ダブダ(アンザッツの1.)、フぉ~(アンザッツの4.の吸気性発声)・・・」といった具合。・・・およそ20秒くらい。

 

2)アンザッツの1ー①.と吸気性5.風とで「ビンギ・ダブダ」を行う。・・・《2年間、一日も休まず?》の【ビンギ・ダブダの仕方】に記したその要領でこれを発声する。「ビンギ(アンザッツの1.)、フぃい~(アンザッツの5.の吸気性発声)、ダブダ(アンザッツの1.)、フぃい~(アンザッツの5.の吸気性発声)・・・」といった具合。・・・およそ20秒くらい。

 

3)アンザッツの4.と吸気性の4.風とで「カタジャック」を行う。・・・アンザッツの4.と吸気性4.風とを交互に発声する。はじめのうちはゆっくりめに、徐々に交互に発声するその切り替えを速くしていく。音程も無理のない範囲で少しずつ上昇させていく。・・・およそ10秒くらい。

 

4)アンザッツの5.と吸気性の5.風とで「カタジャック」を行う。・・・アンザッツの5.と吸気性5.風とを交互に発声する。はじめのうちはゆっくりめに、徐々に交互に発声するその切り替えを速くしていく。音程も無理のない範囲で少しずつ上昇させていく。・・・およそ10秒くらい。

 

5)アンザッツの1ー①.と吸気性の1ー①.風とで「カタジャック」を行う。・・・アンザッツの1ー①.と吸気性1ー①.風とを交互に発声する。はじめのうちはゆっくりめに、徐々に交互に発声するその切り替えを速くしていく。音程も無理のない範囲で少しずつ上昇させていく。・・・およそ10秒くらい。

 

6)アンザッツの3a.と吸気性の3a.風とで「カタジャック」を行う。・・・アンザッツの3a.と吸気性3a.風とを交互に発声する。はじめのうちはゆっくりめに、徐々に交互に発声するその切り替えを速くしていく。低音域で発声する。・・・およそ10秒くらい。

 

7)ガムのアンザッツ5.風と、ガムのアンザッツ3a.風とを交互に発声するトレーニングを行う。・・・先ずは、ガムのアンザッツ5.風を出しやすい音程で発声し始める。そのまま息が途切れないうちに滑らかに下降していって、始めた音程よりも二音半(4度)下の音程で、こんどはガムのアンザッツ3a.風で発声する。詳しく謂えば、二音半(4度)下の音程へと下降していくその間で、5.風の発声から徐々に3a.風の発声へと切り替えていく。が、直ぐさま元の音程へと戻って再びガムの5.風で発声する。ここまでを一息で行う。「ヒぃい~(ガムの5.風)↷モぁあ~(ガム3a.風)↺ヒぃい~(ガムの5.風)」といった具合。これを1クールとする。2クール目は、1クール目よりも半音上の音程からこれを始める。3クール目は、2クール目よりも更に半音上の音程から始める。この要領で、1クールごとに音程を半音ずつ上げていく。これを繰り返していって、ガムのアンザッツ5.風の発声が難しくなったら(あるいは、ガムのそのノイズが自然に消えて、単に、アンザッツ5.の発声になったら)そこで止める。・・・全部通しての時間は、およそ1分くらい。

 

8)アンザッツの3b.を行う。・・・先ずは、出しやすい音程でこれを発声する。「フぁあ~~・・・」といった具合。次に、この出しやすい音程から半音下げた音程で発声する。これを次々に繰り返していく。が、低い方の音域での発声があまり難しくならないうちに、折り返す感じで、こんどは半音ずつ上げていく。が、やはり、高い方の音域での発声があまり難しくならないうちに、再び、半音ずつ下げていく。最初に発声した出しやすい音程のこの辺りに戻ったら、そこで終了。・・・全部通しての時間は、およそ1分半くらい。

 

9)アンザッツの4.と、アンザッツの3a.と、アンザッツの3b.を組み合わせて行う。・・・先ずは、アンザッツの4.が出しやすいその音程で発声する。これを1秒ほど発声したら、そのまま素早く1オクターブと二音半(4度)下の音程へと下がって、これをアンザッツの3a.で発声する。これもまた1秒ほど発声したら、そのまま二音半(4度)上(=はじめにアンザッツ4.で発声した音程の1オクターブ下)の音程へと上がって、こんどはアンザッツの3b.で発声してやや長めに2秒くらい伸ばす。「フぅう(4.で発声)↘(1オクターブと二音半下がって)モぁあ(3a.で発声)↗(二音半上がって)フぅあ~(3b.で発声)」といった具合。これを1クールとして、2クール目は、これよりも半音上の音程で行う。これを次々に繰り返して1クールごと半音ずつ上がっていく。アンザッツの4.またはアンザッツの3b.の発声がやや難しいと感じたら、余裕のあるうちに折り返す感じで半ずつ下がっていく。1クール目よりも更に下がっていって、アンザッツの3a.またはアンザッツの3b.での発声が難しくなったら、そこで止める。慣れてくると、3b.を発声するときに、「あぁ確かに、この3b.って、4.と3a.がブレンドされた、それに近い感じだなぁ」と思えるようになる。・・・全部通しての時間は、およそ1分くらい。

 

*応用編9)の、このトレーニングのときだけは音の移り変わりにおいて、先に示した「滑らかに…」という「↷」や「↺」といったイメージではなくて、割とくっきりと階段的に“素早く”音程を取って進めていく。

 

以上が、「フースラー・メソード」に取り組み始めて1年が経過した頃から、また現在において、私めが日々続けてきているボイストレーニング・メニューの、その大凡の骨格だ。

だから、記した時間などは、その日その日で多少違うのは当たり前で、ここに1分と記してあっても日によっては40秒くらいで終える場合もあるし、30秒と記してあっても50秒くらい続ける場合もある、とそうご理解いただきたいのだ。

だってね、私は精密機械ではないもの。人間というこれに類するもので、日ごと、時それぞれにおいて、身体のあれもこれもが変化する生き物のこれの方に属するもので、それだから、他者とは異なる特性をもちながらもその特性もまた変化し続けているんだよね。で、これに応じたトレーニングとなれば、これもまたこれに合わせて変化するのが当然で、何もかもをここに記載することができない以上、“大凡の骨格”である、このことをご理解願いたい。

前の項目のところでも申し上げた通り、毎日の、私の様々な状態によって、ここに示したトレーニング・メニューも一寸ずつ違ってくるよ、ってことなんだ。

 

《最も重要なこと》

さて、ここからは、「フースラー・メソード」に取り組む上で“最も重要なこと”のこれについて、私めなりにではあるけれど、恐縮ながら語らせていただきたく思う。

 

一つ、「フースラー・メソード」のこれに忠実に従えば、私が日々行っているボイストレーニング・メニューのこれは間違った方法ということになるだろう。というのも、「フースラー・メソード」では、原則、毎日行う、が、7~8分程度で終えること。長くても14~15分程度で終えること、とされている。が、私の場合、ウォーミングアップを除いても、トレーニング全体で25~26分ほど掛かっている。時間のこれに関しては、明らかに「フースラー・メソード」の原則を逸脱している。

だから、先も謂った“大凡の骨格”であることのこれも含めて、私のこれを真似するのは絶対にダメだ。

 

人はぞれぞれに、身体全体もそうだけれど、生まれながらの遺伝的な特性や、育ってきたその環境によって、あるいは、現時点においての生活習慣によって、身体の一部である声帯に関わるこれらの部分についても、それはかなりの割合でその働きや機能の具合に違いがあるわけで。謂えば、人それぞれに“癖”をもっているわけだ。いや、これこそが、まさに、その人の特性であるのだけれどね。

例えば、私のことで謂えば、私は幼い頃、ま、4歳頃から7歳頃に掛けての記憶では、ほとんど声を発する機会もなく育っていたわけで。当時においては威圧的だった父のそれが大きく関わっていたとみられるが、いつもビクビクしながら家に居て育ったのだよ。なので、元々は無口な人間であるようで、現在に至っても、一種こうした性質の方が依然勝っている感じなのだ。ライヴのときの私しか見ていない人には信じられない事実かも知れないけど…。アハハ。

が、社会人になって就いた職業は、どちらかと言うと、喉を酷使する方の仕事で。が、人さまを前に話し言葉を並べる、いまにして思うと、“やや高めな声で少し大きめに発する”こればかりに偏って発声する習慣を身に付けていったとも考えられ、こうした職業を何十年にも渡って続けてきたその影響は決して少なくないように思われる。

それで、これら影響も多かれ少なかれあるのだろう、私の場合、元からチェストボイス(地声)これ自体が弱く、特に低音域での発声が苦手であったようなのだ。かと言って、ファルセット(裏声)で発声するそれもほぼ皆無に近い状況であったため、声帯に関わるあれやこれやの部分があまり強くない状態のまま49歳まで生きてきたらしいのだな。で、そんな“癖”をもちながら、にもかかわらず、49歳になったここから音楽活動・ライヴ活動などといったそうしたことを始めちゃったのだから、ま、課題は山積、というのも当然で。しかも、自作の、そのオリジナル曲ばかりを歌うものだから、更にこれによる“癖”も加わっていったわけで。いやはや、そりゃぁ笑うしかないだろう。ハハハハハ…。

 

ぃやね、こういった、自分がもつ“癖”のこれに気付くことが重要なのだ。

ここにこそ役立つのが、「フースラー・メソード」だ。

私はラッキーかも知れない。59歳を前に、これに出会えたのだからね。

「フースラー・メソード」のうち、基本中の基本である「アンザッツ・メソード、7つの発声法」は、この“癖”を自覚するために在るといっても良いくらいだ。7つの発声法を試みながら、自身の苦手や得意を知る、これが先ずは重要だ。

「アンザッツ」では、苦手を知るだけでも十分なので、発声しにくいからといって、その発声法だけを無理に何度もやるのは良くない。

苦手なこれを徐々に補い矯正してくれるのは、他の「ガム(ノイズ発声)」や「吸気性発声」、および「シュナル」を用いた、これらの方のトレーニングにもあるのだから、これらと併せて少しずつ日々重ねていくことが、次に、最も重要なことになる。

私のトレーニング・メニューでは、アンザッツの3a.に、やらた時間を掛けている。これだけで12~13分だ。また、ウォーミングアップも含めると、アンザッツの4.とアンザッツの5.を発声する機会があちこちに散りばめてあって、これらも割合からするとやや多めになっている。

しかし、これは、地声自体が弱く、特に低音域が弱いそれと、裏声を長きに渡って使ってこなかった私の、その“癖”を矯正・補強するためのトレーニング・メニューだ。他には効果を為さない、私だけのフースラー・メソードだ。

「フースラー・メソード」とは、あくまでも“人間が本来もっている声帯機能を回復させる”というこの原則を示したメソッドだ。フースラー・メソードに取り組む者が、フースラー・メソードの理論と手法のこれを“正しく解釈”して、取り組む者自身が“自身の現状に合った形を探り考え”、”実践して”いってこそ効果を為す、そういったメソードだ。

私は、「フースラー・メソード入門」というこの本に書かれている内容を何度も読み返し続けた。どこをどのようにして補強すべきかを本で確認しながら、併せて、本で確認したこれを実際のトレーニングに取り入れては、その度に、トレーニングで感じた自身の感触にも丁寧に向き合い確かめた。そう、「ガム(ノイズ発声)」や「吸気性発声」、「シュナル」などこれらも日々重ねてきて、こうして1年を掛けて辿り着いた、ひとつ、成果なんだよねぇ。

だから、私ではない何処かの誰かが、私の“癖”に応じたメニューのこれを真似したところで、決して上手くいくはずがないのだ。まして、私如き者の成果が、万能であったり、完璧であったり、とそういったものであるわけがない。

 

武田凡声(Takeda Bonjo)著、「フースラー・メソード入門(日本実業出版社)」というDVD付きの本のこれには、発声別に、それが弱点となっている場合に、どの発声法のトレーニングが有効であるのかの原則も示されていて、とても細かに載っている。まぁ言い方を変えると、先にも謂った通り、この本を基にフースラー・メソードを進めていく場合には、どうしたって、本に書かれているその内容を“正しく解釈”するのと併せて、トレーニングを重ねていくにあたっては、自分の声や自身の心持ちといった“自身と丁寧に向き合う”これが必要で、常に、“自身で考え実践する”そうした姿勢が求められるというわけなんだなぁ。

逆に、こうした姿勢で取り組みさえすれば、人それぞれの“癖”にも的確に応じたトレーニング・メニューのこれへと辿り着けるその自由度はかなり高いメソードである、とそう言えるのではないかな。

だとすると、「フースラー・メソード」を最大限に活かすには、むしろ、こうした姿勢こそが最も重要なのかも。

 

ちなみに、「面倒くさいカモ?」と思った人は、リットーミュージックから出ている「ボーカリストのためのフースラー・メソード」という本の方がイイかも知れない。電子版が出ていて購入できるはずだ。こちらの方が内容も幾分か簡潔に整理されていて、トレーニングを進めて行く上でも効率的であるかも知れない。

 

兎にも角にも、「フースラー・メソード」とは、その人の“癖”を明らかにしながら、その“癖”を矯正・補強していくためのものだ。これによって、その人が目指す、その人が求める“如何なる声もが自由な感覚でもって発声できる”そうしたものだ。繰り返すけど、“人間が本来もっている声帯機能を回復させる”これを根本として編み上げたメソードだ。

そして、これと出会えた私は、49歳までの自分よりも、59歳を前にしたときの自分よりも、還暦を迎えてからの自分の方が歌っていてますます楽しいと感じているこのことが、いま何より面白く愉快に思えてならない。

私なる者も、私の人生も、それが何であるかは未ださっぱり分からないままだけれど、が、こんなこともあったりすると、分からないこれもなかなか好いものだなぁ、と思えてくる。案外、こんなことでイイのかも知れない、なんてね。

 

ところで、これは、ボイストレーニングのことに限らず、何においても共通して謂えることだと、まぁ私はそう思っているのだけれど…。「これをこのまま進めていけば大丈夫ですよ」、「これだけをやっていけば上手くいきますよ」などを謳い文句にした、これだけを“信じ込ませる”こうした方法・手法の類は、悪いとまでは言わないけれど、やはり、謳い文句のこのままに乗っかるは如何なものかと。

殊、人それぞれが能力の一つとして何かを身に付けていこうとするときの、ここにおいての“信じ込む”はダメだろう。だって、そんな誰にも当てはまる、オールマイティな方法・手法なんてあると思う?

身に付けるのは自分自身だ。他の誰でもない自分自身がここに居る、このことを決して忘れてはならない。

提示されている方法・手法を正しく解釈した上で、あとはこれをヒントに、あくまでも、自分で考え続けること、自分で実際に試して工夫し続けること、自分自身で感じる感触を丁寧に何度も確かめること。これらを避けては物事は自由の方向へは向かないだろうと思うんだよね。

って、私が謂うこれも、“信じ込む”ってぇのはダメなわけよね。アハハ…。

だから、私のこのブログも読むだけ読んだら、あとは忘れて、ご自身で“考えて続けて”いただくのがイイかと。はい。

 

《余談:3週間空けた後》

さて、先にも申し上げたとおり、この約2年間に渡って「フースラー・メソード」に取り組んできたなかでは、2021年8月下旬から9月中旬に掛けての3週間ほど、この間だけ、トレーニングをお休みしてしまったのだった。

で、余談にはなるけれど、トレーニングをお休みしてしまった3週間のその後、どう再開したかを簡単に語って、これを以って今回は終わろうと思う。

 

1)再開して1日目と2日目…「ウォーミングアップ」については通常通り行い、あとは、「トレーニング・基本編その1」と「トレーニング・基本編その2」のこれを、発声しやすい音域に限って、一つの発声法についてそれぞれ30秒から1分くらい行って、これだけで終えた。

 

2)再開して3日目と4日目…「ウォーミングアップ」を通常通り行い、「トレーニング・基本編その1」と「トレーニング・基本編その2」のこれらも、ほぼ通常通りに行った。但し、発声にくい発声法、発声にくい音域、これらを感じたトレーニングについては、直ぐに、そこで止めた。

 

3)再開して5日目…「ウォーミングアップ」を通常通り行い、「トレーニング・基本編その1」と「トレーニング・基本編その2」も通常通りに行った。5日目にもなると、発声のしにくさ、発声しにくい音域、これらはあまり感じられなくなった。そこで、「トレーニング・応用編」も行うことにした。が、あくまでも無理のない範囲で止めた。

 

4)再開して6日目…「ウォーミングアップ」から、「トレーニング・基本編その1」と「トレーニング・基本編その2」、更には、「トレーニング・応用編」も通常通り行った。どのトレーニングも無理なくこなせるようになった。

 

といったように、再開して6日目には、おおよそ、そこまでに積み重ねてきた声帯の、それに近い状態にまで戻った。

 

以上、「その後の『フースラー・メソード』」と題して、私めの2年間に渡るボイストレーニングのこれについて、諸々語らせていただいた。

 

これなる長文をお読みいただいた皆様には、誠に、恐縮に存じます。併せて、深く感謝申し上げます。

ありがとうございました。

 

(追記)

*声帯の機能に好ましくない影響を及ぼす飲食物

・寿司、酢の物など(翌日にも影響する)

・アイスクリームの類(翌日にも影響する)

・酒類(翌日にも影響する)

・牛乳や乳製品の類(ただし、プレーン・ヨーグルトは影響が少ない)

・ウーロン茶、紅茶、日本茶など

・柑橘系の果物やジュース

・冷水

・極端に辛いもの

・めんつゆ、せんべい(醤油系がダメなのかも?)

ちなみに、コーヒーは、ほとんど影響がない(ただし、コーヒーを飲みながら誰かとお喋りをするのはNG)。

ボイストレーニング中やライヴ本番中に喉が渇いたときは、常温の水を飲んで喉を潤しています。

以上のこれも、私の場合、だ。