今日の一曲 No.64:上原ひろみ「WAKE UP AND DREAM<新しい始まりへ>」~新年を迎えて・その3~

「今日の一曲」シリーズの第64回目。

元旦の第62回目(真島俊夫「3つのジャポニスム」)、2日の第63回目(武満徹「5人の打楽器奏者とオーケストラのための”FROM ME FLOWS WHAT YOU CALL TIME”」)に続いて、 2018年、新年の三箇日は、いつもの音楽一曲(LPレコード盤またはCD)のご紹介とともに、新年を迎えての心境も併せて書かせていただいております。

では、はじめさせていただきます。

・・・・

早朝、少々の寝ぼけ眼を徐々に振り払うように東側の窓を開けると、今朝も元旦から連日続いて、上空高く藍色の星空には濃い橙色が低い位置から彩りを加えていた。

でも直ぐに踵(きびす)を返して、今朝は西側の窓も間もなく開けた。

<もしかして、昨夜の「スーパームーン(大きな満月)」が西の空に降りてきているかも知れない・・・>

と、寝ぼけた感覚の割には脳裏にふと、ひらめいたからだ。

「おお、まん丸のお月様!」

思わず、いつもの独り言を吐きながらも感激。

当然のことながらスーパームーンではないのだけれど、昨夜見せつけてくれたスーパームーンの風格を残して、まん丸の月は、くっきりと西の空の低いところまで降りてきていた。

今朝に限っては、西の空を眺めながら一つ深呼吸。ひんやりと冷たい外気を身体に巡らせた。

 

さて、今朝の選曲は、昨朝よりも更に時間は要らなかった。

部屋のレコードラックに並べられたLPレコード盤とCDを、ざぁっと一度見回しただけで、

<今朝は、これ!>

胸裏で明確な決断をして、一枚のCDを取り出した。

 

ジャズピアニスト上原ひろみが、コントラバス・ギターのアンソニー・ジャクソンとドラムスのサイモン・フィリップスと組んで創り上げたアルバム「SPARK」だ(2016年2月にリリース)。

このアルバム、9曲が収録されているけれど、アルバム全体がクラシック音楽で言うなら「組曲」のように9作品のテーマの一つひとつが連動して綴られていく。

1.SPARK<心突き動かす衝撃、一瞬にして世界が変わるその瞬間>

2.IN A TRANCE<想いはあふれ、我を忘れる>

3.TAKE ME AWAY<どこか遠くへ、まだ見つけていないどこかへ>

4.WONDERLAND<たどり着いたその先は、ワンダーランド>

5.INDULGENCE<瞬間に溺れ、時が止まる>

6.DILEMMA<進べきか、戻るべきか>

7.WHAT WILL BE,WILL BE<運命の導くままに>

8.WAKE UP AND DREAM<新しい始まりへ>

9.ALL'S WELL<終わりよければすべてよし>

 

上原ひろみの音楽は、このアルバムの楽曲のみならず、どの作品にも、斬新、革新、刺激・・・などの興奮気味な第一印象で迫ってくるのだけれど、必ず、どこかで、優しく、柔らかく、潤いあるオアシスのような場を与えてもくれる・・・。

 

さらに、組曲のように9曲が並べられたこのアルバムでは、アルバム全体を通して、そのオアシスとなる一曲が存在する。

8曲目「WAKE UP AND DREAM <新しい始まりへ>」だ。

この一曲だけが、上原ひろみが一人で奏でるピアノ・ソロの楽曲なのだ。

それは、日の光を反射させて煌びやかに瞬く川面のような分散和音と、その穏やかで豊かな水量の川の流れを想わせる(イメージさせる)フレーズ感の長い旋律とが、まさに自然発生的に相まって、一台のピアノから次々と奏でらていく。

 

目を閉じて聴いていると、静かな呼吸を蘇らせてくれる。

<「新しい始まりへ」・・・か>

胸裏で呟くと、また少し一度だけ深い呼吸になった。

が、またすぐに静かな呼吸に戻る。

 

そのうちに気付くと、昨朝も自問自答した覚悟を確かめていた。

<日本の子供たちを救わないと・・・>

また、胸裏で、でも、やや強く呟く。

 

日本の小学校、中学校、高等学校での学校教育はもう20年は遅れているだろう。専修学校や大学の存在、入試の仕組みを含めても、学校と称される場所は、子供たちの「自立と自律」を殆んど育てられずに社会へと放り込んでいる。そこには悲惨な現状が待ち受けているというのは、もう稀ではない。一部の限られた教師や学校だけが現状を何とかして解決しようと思考錯誤を繰り返して取り組んでいるだけで、たまたま、こうした教師と学校に出会った子供はむしろラッキーでしかない。そもそも、仕組み・システムに問題があるのだから、ひとりの教師や一つの学校だけでなかなか解決するのも難しい。このまま、社会に「自立と自律」を身に着けていない大人が溢れたなら日本という国の未来は衰退の一途を辿り、日本人の幸せは、もう望めなくなる。学校教育システムの大変革は待ったなしだと感じる・・・、では、何をどうするのか?・・・を、提案していく機会と実践を通じて、周囲の人たちからの協力も得て、日本の社会に僅かひとかけらだけでも投じることはできないだろうか。

(ここで記載することではなかったかな?・・・具体的な提案は別のところで、いずれ記載するかと思います。ともかく、学校・教育関係者の方が「素人が何を言っているんだ」など、不機嫌な思いをされたなら、深くお詫び申し上げます。が、共に御思案いただけたらと存じます。)

(さて、話題を戻そう)

・・・でも、こんな、あんなを、ここ3年ほど(私も遅れているのだけれど)真剣に考えてきていて、ここからの自分自身と向き合う時間を、ここで聴いている音楽で一旦は心鎮めてからにしている。

 

上原ひろみ、「WAKE UP AND DREAM <新しい始まりへ>」から溢れ出る音たちは、今朝も、優しくて、あたたかくて、・・・そのオアシスに心を預けるていると、身体の奥深いところから湧きあがってくるものは、またしても目頭を濡らすのだった。

「ふう~っ・・・」

深く長い息を吐いては・・・

「今朝も、好い(イイ)朝だね~」

またまた、ここで呟く独り言と一緒に・・・(笑)。