今日の一曲 No.54:相曽晴日「舞」(アルバム「トワイライトの風」より)

「今日の一曲」の第54回目。

 

中学生・高校生の頃、そして、大学生生活を送っていた時代、これらの音楽たちにも多くの刺激をもらった。

現在の音楽創作・音楽活動につながる影響は、結果的にではあるけれど多分にここにもあったと言ってよいかと・・・、同時に振り返えってみて、とてもラッキーな時代を生きさせてもらったと感じる一場面だ。

 

それは、1971年から1986年までの間、ラジオで放送されて、内、1976年から1982年頃はテレビでも放映されていた。ヤマハ音楽振興会が主催する「ポプコン(ポピュラー・コンテスト)」と連動して、受賞者やこれを切っ掛けにプロ・デビューしたミュージシャンらを紹介する音楽番組で、長年に渡って大石吾郎さんが司会を務めていた。

私めと同世代であったり、ここに近い世代の方々は、よくご存知かと・・・、「コッキーポップ」という番組。

 

特に多感な時期であったであろう中学・高校生時代とテレビ放映がされていたそれとが丁度重なった。

だから、私的には、日曜日正午過ぎのテレビ画面から届けられる「コッキーポップ」が事の始まりとなった(笑)。

 

自分で(自分たちで)作詞・作曲をして、その楽曲を、自分で(自分たちで)演奏し歌う・・・「シンガー・ソングライター」という言葉を知ったのも、どんな人たちのことを言うのかも、正確に理解したのは、この番組からだったように思う。

 

年代は順不同だけれど(しかも想いつくままの列挙だけで恐縮です)・・・、「小坂明子」、「中島みゆき」、「八神純子」、「谷山浩子」、「長渕剛」、「円広志」、「伊丹哲也とSide By Side」、「チャゲ&飛鳥」、「雅夢」、「あみん」、「NSP」、「世良公則とツイスト」、「クリスタルキング」、などなど・・・、ソロ、デュエット、デュオ、バンドまで・・・、話題となって、ヒット曲としても認識されて、トップ・アーティストとして長く音楽界で活躍するミュージシャンまで生み出した。それはそれは絶妙のタイミングで刺激と面白さを与えてくれた。ラッキーな体感の一つだった。

 

でもね・・、80年代に入った頃からだったかな・・・、

「コッキーポップ」が音楽番組として視聴者から広く支持を集め、「ポプコン」もいよいよ盛んになって多くから注目を浴びて、どちらも、その存在が更に拡がろうとしていた頃だったと思う。ところが、時がここから進むにつれて、楽曲やミュージシャンのアートやアーティストとしての個性や才能よりも、目先優先の商業目的とした価値の方が、じりじりと、そのうちに、圧倒的に勝りはじめたように感じた。

単なる偶然なのかも知れないけれど、ほぼ同じタイミングで、急激にメディアとしての注目度も反対に落ち始めていったように思えた。周囲に居た音楽好きな友人らとの話題からも薄れていった。

「コッキーポップ」も「ポプコン」も、大衆の受け皿になりつつあったのだろうけど、音楽好きの中でも、「少しだけマニアック寄りな」を感じていたかった人に支持されて拡がりつつあったものであって、「完全な大衆」へと無理強いをし過ぎたのではと・・・。

83年にはテレビ放映はなくなり、再び、深夜の時間帯でのラジオ放送だけになった。

・・・

などと、現在ではなく・・・当時、生意気にも分かったふうな現象分析をして、勝手な結論付けをして、そろそろ自身の青春とも言える時期とオサラバする言い訳の材料の一つにしていたふしも・・・。そんな冷ややかな眺め方で自身もこの番組から離れていった。

「マニアックな音楽好き」でも「大衆的な音楽好き」でもなく、「中途半端な音楽好き」のしたことは、こんなだった。・・・現在に至って俯瞰的に捉えると、それまでに沢山の「ラッキー」をもらっただけに、残念でもあり悔しくもあって仕方がなかったのだろう・・・(苦笑)。

 

そんな身勝手で中途半端な音楽好きが、「コッキーポップ」からいただいたラッキーを、最後のものとして受け止めたのが・・・、

相曽晴日というアーティスト、そして、アルバム「トワイライトの風」に収録された楽曲たちだった。

 

テレビ放映が終わった直後だったか(?)、深夜ラジオの「コッキーポップ」で出会ったように記憶する。

ファースト・アルバムでもある「トワイライトの風」は、82年のリリース。もちろん、LPレコード盤だ(笑)(上の写真)。

 

先ずラジオから聴こえてきたのは、アルバムの中の「トワイライト」という曲。歌声と歌いまわしに独特な世界観があって、これらがメロディとも好い関係を創り出していた。何処からともなく新鮮な風がそっと部屋に入ってきたかのように感じて心地好い。

 

当然のように数日内にはレコード店へと向かった。この頃は、そう、例の船橋市と習志野市の境くらいのところにあるレコード店へだ。

買ったLP盤を手にして部屋に戻ると、早速、レコードプレーヤーに乗せて針を落とした。

それからは、A面、B面、どちらも、じっくりと、独りを味わいながら全曲を聴いた。

 

こうして新しい盤をひと通り聴き終えたところで、決まって、しばらくしてから脳内に優先的に残ったフレーズが無限ループとなって再現されるのだった。

 

今回は、A面の4曲目「舞」・・・ザビのフレーズがそうだった。

・・・

もう忘れていいですか

粉雪が舞い踊る

もう忘れていいですか

空はすみれ色に

・・・

 

寂し気な歌詞が軽やかなワルツ風のリズムとテンポに乗せられた優し気なメロディとともに歌われる。

アルバムを通して爽やさと温かみのある印象の歌声が、この曲に限ってだけ、ほんの1フレーズ、強い芯を感じる声が混じって表れるのだった。

 

当時から数えて何十年もが経過した現在も、ふと、突然、脳内に無限ループとなって再現される、

・・・

相曽晴日、「舞」・・・。

・・・

・・・

もう忘れていいですか

空はすみれ色に~

・・・

つい、空を見上げて、その仰ぎ頭上に広がる「すみれ色?」を想像する。

「ほんと、何にも分かっていない若ぞうだったなぁ~」なんて、独りで恥ずかしくもなるのだった。

えっ?現在もあまり変わらないか・・・(笑)。