「今日の一曲」の第38回目。
第35回目からは、それはこちら側の都合でしかないのだけれど(笑:理由は第36回目に記載)、アナログ・レコード盤の、それも、“7インチ・シングル盤”に収録された曲ばかりを続けて、ご紹介させていただいている。
クラシック音楽を中心に聴いて育ってきた少年も、小学校の高学年から中学生くらいになると、周囲の様々な刺激を受けて、こづかいを貯めながら、比較的安い、“7インチ・シングル盤”のこれに収録された音楽を求めて、近所のレコード店に通うようになった。
今回ご紹介するのは、その70年代の頃に買った盤だ。
チューリップの「心の旅」。
チューリップについて、または「心の旅」について、広く大衆に世代も越えて御存知の方は多いかと・・・。ここでの説明は必要ないように思うので今回は省かせていただく。
中学2年生のときだった。
チューリップが「心の旅」の大ヒットで全国的に知られるようになってから一年くらいが経過していたと思う。
その頃の放課後のある日のことだった。
音楽室で先輩たちの男女5名が、ギター(2)、ベース、ピアノ、ヴォーカルでの編成で、このチューリップの「心の旅」を練習?いや、もうこの時は演奏披露会のような状況だった。聴きに来ていた者も10数名以上は確実に集まっていて、私も聴く側の一人だった。
この演奏が完成度が高くて(当時の印象でだけど・・・)、テレビやラジオから聴いていたチューリップの「心の旅」より引きつけられるものがあった。感動したのだった。
当時、田舎の中学生が音楽を生で聴く機会などは滅多になかったものだから、その生の演奏の威力・魅力は半端ではなかったのだ。加えて、それを身近な同じ中学校の先輩たちが演奏しているという出来事だけで、多いに感動を呼んだのだろう。
それは、私だけでなく、聴きに集まっていた者皆が感じていたと思う。
確かに冷静に聴き比べたら、決してチューリップの演奏を上回っているはずもないのだけどね・・・(笑)。
で、単純というか、思慮深くないというか、この先輩たちの「心の旅」に刺激をされて、例の自宅から歩いて20分ほどのところにある物静かそうなオジさんが一人で開いているレコード店で、今日ご紹介のEP盤を買ったのだった。
「♫ あ〜、だから今夜だけは〜 ♫」
の冒頭の部分は、あらためて買ってきたレコード盤に針を落として聴いてもインパクトのあるフレーズだった。
時は一気に、ん〜・・・、11年くらい経過。
社会人として3年目とその後の数年間のことだ。
「今日の一曲」を以前よりお読みいただいている方にはもう御存知いただいている話になるが・・・、
社会人1年目に職場の派閥争いのそのどちら側にも付かないでいたら自分が干されてしまい、2年目はアルバイトを3件かけ持っての生活。ところが、3年目に救世主が現れ、派閥争いをしていた職場を一掃して私を呼び戻してくれた。
この優秀なる頭脳と人格を、すぐ近くで体感できたことはそうそうない人生の幸運の一つだと感じている。
強力なリーダーシップにはユーモアのセンスも多分にあって、職場は2年前が嘘のように活気に包まれ一つにまとまっていった。
仕事を終えた後に職場仲間で呑みに食事にという機会も自然と増え、このリーダーを囲んでといった会も仕事の区切り目ごとに設けられるようになった。当時のことだ、カラオケが準備された場所が大抵だ。
で、そのカラオケの閉めの曲となれば、
「♫ あ〜、だから今夜だけは〜♫」
と、意気揚々と皆で歌うのが恒例になった。
中学生時代に聴いた先輩たちの演奏も、秀でたリーダーを囲みながら職場の皆が歌うカラオケも、その場その場にあるエネルギーに、勢いや活気があることが前提と言えそうだ。チューリップの「心の旅」という曲そのものにもパワフルなエネルギーが宿っていそうな・・・。
聞くところに寄ると、九州から全国展開をという狭間に立たされていたチューリップが、もう後がない状況の中で創り上げた曲が「心の旅」だっだとか・・・。
チューリップの「心の旅」を、満ち溢れたエネルギーに触れて過ごしていた二つの時代ともに、「今日の一曲」としてご紹介させていただいた。
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