今日の一曲 No.12:坂本龍一「音楽図鑑」よりSELF PORTRAIT

「今日の一曲」の12回目。今回は、坂本龍一のアルバム「音楽図鑑」の中から「SELF PORTRAIT」だ。

 

いまのところ、「今日の一曲」ではクラシック音楽かジャズ系の音楽の紹介が多くなってしまっている。意図もなく、その日その日で気ままに手に取ったレコード・ジャケットから想い出される記憶を綴っていたら、そうなった。自身でも意外である。もっと様々な音楽を紹介することになると思っていたからだ。物事は「non-judgmental(ノン・ジャッジメンタル)」、前もって勝手に決めつけないように心掛けたいものだ。

 

さて、前置きが長くなった(いつもだが・・)。

以前に載せた「今日の一曲⑧」では矢野顕子「いつか王子様が」を紹介して、テクノポップとその時代背景にも触れた。

 

ここから4~5年後、坂本龍一のアルバム「音楽図鑑」と出会う。もちろん、LPレコード盤だ。そろそろ念を押さないでもよいか(笑)。

2枚組のアルバムで、坂本龍一がYMOでの活動を経て直ぐ後に出したアルバムだ。このアルバムにもYMOのメンバーであった細野晴臣、高橋幸宏が参加している。が、テクノポップとは異なる。テクノ・サウンドを追求して実験し続けた時代を経て、その結果を活かして次なる試みを表現した音楽に感じる。テクノ・サウンドの要素に、生の弦楽器や管楽器、生のドラムなどの音も加わって、これらが融合している。おそらく、当時の坂本龍一が表現したかったものを純粋に作品に込めて創り上げた音と思える。決して世間へのウケ狙いなどというのではなく。いつものことだが、音楽評論家ではない。個人の感想だ。これも、もう念を押さなくてもよいか(笑)。

 

このアルバムを手にした当時、日常は「心ここに在らず」といった状態であった。

自分のしていることに、まったく自信の一欠片も感じられずにいた。懸命にやっているはずのことが何か空回りしている。ならば自身の心掛けが誤った方向を向いているのか?・・・などを問いかけても何もつかめずにいた。前へ進める気が徐々に失せていくようだった。

社会人として初めての職場は、派閥争いだけで明け暮れているような組織だった。頑固にも、どちらの派閥にも着かないでいたら、そのうち干されてしまった。

大人になりきれていない自分の薄さにも酷く応えたが、馬鹿げた大人社会を否定することも止まなかった。

そう、自身が薄っぺらいから視界はますます狭くなっていった。どっちを向いて、どう進めば良いのか、まったく見当のつかない日々が続く。そのうち、足掻くことさえしなくなっていた。辛かったとか苦しかったとか、そんな感覚はもう憶えてはいないが、決して好き(よき)記憶はない。

 

そんな頃に、ぼーっとしながら自宅近所にその頃はまだあったレコード店に足を運んだ。「音楽図鑑」はそこで手にしたLPレコード盤だ。発表されてから数年は過ぎていたと思うが・・・。

 

2枚組の1枚目(どちらが1枚目かは不明だが、たぶん・・・)、A面の4曲目にその曲は収録されている。

買ってきたそのLP盤を初めてレコード・プレーヤーに乗せて針を落とし、1枚目のA面から順に聴く。

4曲目、そのうちに勝手に涙が溢れて止まらない。

涙を拭いながらレコード・ジャケットを見渡し曲名を探した。

この時の情景は現在でもはっきりと記憶として再現が可能だ。

 

この日、このアルバムを2度ほどくり返し聴いたが、その後、何年もの間、このアルバムを聴くことはなかった。何故かは想い出せない。

おそらく、次に聴いたのは10年以上も過ぎてからだ。

 

「今から想えば」ということになってしまうが、まぁ、記憶とはそんなものだとも思うが・・・、

当時、溢れてきた涙によって何かが解けた感覚があったように想える。今も、この曲を聴くと泣きそうになる。

と、想像して笑いそうになって読んだあなたは私のことをよく知っている方だと思うが、オジさんも泣きそうにはなるのだよ(笑)。涙を流して泣きはしないのだが・・・。たまには心で泣くのだ。少しは知っていて欲しい。冗談だ、知らなくてよい(苦笑)。

 

こうした記憶と共にある音楽が、坂本龍一のアルバム「音楽図鑑」に収録されているということの話なのだが、曲のタイトルが「SELF PORTRAIT」であったことも、何か当時の涙を物語っているようにさえ思えてくる。

今回は、少々暗く重い「今日の一曲」に感じたかも知れない。

未熟者であることは相変わらずだが、オジさんだものな、これでも様々痛い目に遭いながら、それなりに年齢を重ねてきている(笑)。40歳を過ぎたらだったか、何歳だったか、「自分の顔に責任をもて」というような言葉もあるが、そんな年齢にもなったのか・・・。