今日の一曲 No.1 : ドヴォルザーク作曲「交響曲第9番 新世界より」

「愛間純人のミュージック・ヒストリー(第1話〜第8話)」は時間軸に従って、出会った音楽やその当時のことを、まあ、ざっくりと書いてきました。

で、そこに載せた音楽や、または載せられなかった音楽も含めて、私が出会った音楽を一曲ずつをもう少し丁寧に語っていこうと思います。

 

 

 「今日の一曲」の記念すべき?(笑)・・・第1回目は、ドヴォルザーク作曲、交響曲第9番「新世界より」を取り上げて語ってみることにする。

何もこの曲の蘊蓄を語るわけではないのだけれど、・・・私よりもこの曲に詳しい人は幾らでもいらっしゃると思うので・・・。

 

「今日の一曲」シリーズでは、愛間純人なる者がどんなふうに音楽と出会って、どんなふうに触れ合ってきたかを勝手に語らせていただくという・・・ん~、まぁそれでも、こんなんでも半世紀以上生きてきている人間ではあるので、読んでいただく方たちにも何かしらはヒントめいたものはお感じいただける・・・かも知れない(汗)。いや何もないかなぁ~(笑)。で、読み手側が上手に読み取ってくれることを祈りながら・・・。

では、始めますよ。
3~4歳頃から叔父の影響でクラシック音楽を聴いていたのだけれど、演奏時間が45分から1時間くらいある交響曲を最初から最後まで通して聴くようになったのは小学校の高学年になってからだったと思う。

その少々長めの音楽を興味深く最初から最後まで通して聴いた最初の交響曲が、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」であった。

小学生の頃、下校時間になると、校舎内にも校庭にも流れたのが、この交響曲の第2楽章だった。静かでゆっくりしたテンポのラルゴの楽章の一部に使われているメロディは誰もが耳にしていることだろう。このメロディに歌詞を付けた歌が日本では、「家路」という題名で親しまれている。音楽の教科書に載っていたような・・。
そう言えば、最近は(少し前になってしまうか・・・)、力強い第4楽章もCMで使われていたりしてね。

下校時刻になると、この曲と共に放送委員が、
「下校時刻になりました、用がある人もない人も早く帰りましょう。」
みたいな?・・・ことを、マイク通して校舎内と校庭にスピーカーを通して呼びかけて・・・。
『用がある人もない人も』っていうのが、なかなか何気に強制的な言葉だったのだなぁ~と、大人になってから思ってみたりして・・・(笑)。
でも、先ずは、こうした出会いで聴くようになった曲だったように記憶している。

その後、この曲とは印象深い節目、節目ごと、その場面でリンクする。

特に想い出されるのが、中学生のときの卒業式。
校長先生や来賓の挨拶の後からだったと記憶しているのだけれど、式の間、ずうっとBGMとして静かな音量で第1楽章からカット無しで流れていた。

 

この頃には既に好きな音楽の一つになっていたので、よ~く憶えている。

 

当時、学校で勉強したことや授業の内容のことは覚えていないのだけれど・・・(汗)、クラス、学年、男女隔たりなく皆が仲良くて、休み時間や放課後、体育祭や文化祭、合唱祭などは楽しく過ごせた中学時代だった。
だからその卒業式は決して退屈なことも無く、その日のことを良く憶えている。

 

卒業式を終えて、各クラスの教室で、学級担任の先生がクラス生徒全員に向けて贈ってくれた最後の言葉は、
「これでいいのかと常に考えなさい」
「今の笑顔を忘れないこと」
この二つだった。
<先生、この二つなら、まあまあ実行できているかも知れないです。>

さて、このドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」が収録された盤について・・・、
最初に買ったのはLPレコード盤。中学1年生の時に、なんと本屋さんで買った。
中学校の校門から30秒くらいのところにあった本屋さん。その本屋さんで、「世界名曲全集」の年間予約のチラシか何かを、たまたまもらってきたのか、何か本を買ったときに袋に入っていたかで、それで自分で予約した。
月々のこづかいを両親との交渉により先に年間分立替えてもらって予約したのだよ。そうして、各月ごとに1枚ずつLPレコード盤が本屋さんに届くと取りに行った。月々の支払であるなら、こづかいの範囲内で買えたくらいだから、LPレコード1枚あたりの値段としては格安だったのだと思うのだけど、全集すべての総額としての値段までは正確には憶えていない。
確かに、全集のなかのLPレコード盤ではあったので、言い方は良くないけれど(・・・当時から少しして分かったことではあるが)、収録された演奏は当時の日本ではあまり有名ではない演奏家や指揮者、オーケストラのものも含まれていた。
でも、イヤイヤ、今、現在になって聴くと、なかなか良い演奏と想えるものばかりですよ~!・・・そう、むしろ、現在に至っては貴重な名演ともいえる演奏が収録された盤が揃った全集と言ってもいいと思う。

 

 

さて、その全集のなかの第4巻に、この曲、ドヴォルザーク作曲の交響曲第9番「新世界より」が収録されていて、LPレコード盤を自分のものとして手にした最初の盤となった。・・・(第1巻から順番に届くというわけではなかった。:SP盤は小学生のときに既に自分で買いに行ったことがあった。)

 

 

そして、「今日の一曲」シリーズの第1回目にご紹介する盤が、これというわけだ。

 

ドヴォルザーク作曲、交響曲第9番「新世界より」。
演奏は、カレル・アンチェル指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団。
おそらく、1950年代後半から1960年代前半に収録されたものと考えられる。

この盤の他にも、以降、同じく、ドヴォルザーク作曲、交響曲第9番「新世界より」を収録した盤を購入していて、現在所有するのは、アナログLPレコード盤とCDを合せて4枚になる。
2枚目は、高校生の時に買ったLPレコード盤で、ジョージ・セル指揮、クリーヴランド管弦楽団の演奏のもの。
3枚目は、30歳頃に買ったCDで、ヴァーツラフ・ノイマン指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団のライヴ演奏のもの。
4枚目は、20歳頃には出ていたLPレコードを買い損ねて、数年前にCDになったものを買ったのだけれど、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏のだ。
これらのLPレコード盤とCDについては、また別の機会に語ることになるかと・・・。

 

 

さて、初めて自ら「本屋さん」で購入したLPレコード盤、この盤から聴こえてくる演奏がドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」として、「もっとも自然に感じられる演奏」と、勝手ながら思えてしまう。
その後もこの曲の他の演奏のものを聴くときはこの盤の演奏が基準になっているほどで、だから、他の演奏のものを常にこの盤の演奏と聴き比べてしまう・・・つまりは、この演奏が常に記憶に留まっている状態にあることになる。大げさかも知れないが、身体に染み込んでいるような感覚だ。
・・・まぁ~、アヒルのヒナだったか?卵から孵(かえ)ると最初に見たものを親だと思って後にくっついて歩いたり泳いだりする・・・あんな感じかな(笑)。ん?ちがうか・・・?(笑)

 

テンポ感は特にで、鳴ってくる楽器たちの音色や響き、バランスも、・・・この盤から聴こえてくるものが、もっとも自然に、そう「自然に」感じられるのだ。

 

 

当時住んでいた地域というのが東京都と言えども、まあ田舎町で、特に当時は、さらには小学生の頃には、近所の雑木林でクワガタやカブトムシを、また地元を流れる多摩川の近くでカエルやザリガニやらを採って遊んでいたようなところだったから・・・、この盤を手にした頃は中学生であっても、それは、少しはチェコやスラブ地方の風土的なものを写真で見たり調べたりもした記憶もあるのでその程度の知識は持ち合わせていたとしても・・・、当時、自身でそれまでに体感してきたものから培った感性みたいなものからイメージされるものと、この盤の演奏から聴こえてくる音たちの印象から想像し得るイメージとが、もっとも自然に腑に落ちるというか、もっとも自然に一致するというか、・・・やはり、そんなふうに感じてならない。きっと当時も、今に至っても、感覚的にそう想えてならない、というのは変わっていない。

 

・・・やはり、アヒルのヒナっぽい?

 

 

こうした風土的であったり自然的な感覚として、作曲したドヴォルザーク自身は本当はどうであったのだろうか?・・・と、ふと、やはり想ってしまう。当時、中学生だったにしては・・・というのは関係ないかも知れないけれど、とにかくもう当時から音楽は好きだったのだね~。学校のお勉強はで不出来なガキ(私のことだよ)ではあったのだけれど・・・、でも、一つの曲からこんなことも想像して考えてみたりはしたのだった。まぁ、大したほどには想像を膨らませることはできなかったのだけれど、それでも、ドヴォルザークは故郷を想いながら新しい地であるアメリカという国で、不安を打ち消すかのように何かを必死に切り開こうとして、でも必死に自分の心を優しさで守ろうとしたりして、この作品を創ったのではないだろうか・・・などと想ったりしてね・・・。
もちろん、当時の中学生の勝手な解釈ですよ。

 

 

その後、徐々にこの曲の存在は大きくなっていって、高校生時代も、大学、社会人になってからも、素朴さや優しさを感じたくて、でも力強く向かっていくのだと思いたい・・・こうした想いに触れたくなったときに聴くようになった一曲になっていった。
そして、今また、少し不安な明日にも希望を持ちたいときの一曲でもある。

 

 

同曲のなかでも、特にこの盤に収録された、カレル・アンチェル指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏は、私にとって、もっとも自然で温かさにあふれた音たちで、やはり記憶に染み込んだ音たちであると言える。

 

 

「今日の一曲」の第1回目、ドヴォルザーク作曲、交響曲第9番「新世界より」を、カレル・アンチェル指揮&チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、現在にあっては貴重ともいえる演奏を収録したLPレコード盤とともにご紹介させていただいた。