今日の一曲 No.71:ブラームス作曲「ピアノ協奏曲第2番」(ルービンシュタイン&オーマンディ&フィラデルフィア管弦楽団)

「今日の一曲」シリーズの第71回です。

71枚目の盤、これはもしかしたら名演・名盤の一つでは?と思えるLPレコード盤です。第6回(2016/11/03)で、ホルスト作曲の組曲「惑星」をユージン・オーマンディ指揮でフィラデルフィア管弦楽団演奏のLPレコード盤と一緒にご紹介させていただきましたが、今回はその続編的な話になります。

それでは、・・・・

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高校に入学したちょうどその頃に手にした一枚のLPレコード盤・・・ホルスト作曲の組曲「惑星」はユージン・オーマンディ指揮でフィラデルフィア管弦楽団の演奏のものだった。

洋服職人の叔父の影響でだろう、3歳の頃からクラシック音楽やストリング・アレンジの映画音楽などをレコード盤を通して聴くことは生活の中にあった。むしろ、物心ついた年齢には自らも好み、選んで、これらの音楽を聴くようになっていた。

その中で、ユージン・オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団という組み合わせは、当時の高校生コゾウにも強いインパクトを与えたフルオーケストラの響きだった(ここまでの内容は、第6回(2016/11/03)にも記載)。

 

以来、月々もらっていた小遣いを貯めながら、家の近所にある例の物静かそうなオジさんが独りで営んでいるレコード店に度々立ち寄っては購入の機会を待ちきれない思いで過ごしていた。

<ユージン・オーマンディとフィラデルフィア・・・>

レコード店に立ち寄る度に呪文を唱えるがごとく胸裏で呟いた。

 

半年近くは経過していたと思う。

高校1年生の夏も過ぎて2学期も始まっていたから・・・。少しばかり美しくない話ではあるのだけれど(恐縮ながら)、この頃、現在から思えばストレス性のものだったのかも知れない・・・ひどい下痢を繰り返し起こしていて2学期早々3日ほど学校を休んだりもした。

にもかかわらず、何故か病院にも行かないでいた。両親にも伝えなかった。きっと、下痢の症状と学校に行きたくない気持ちは繋がっているという自覚があったからだろう、言えなかったのだ。学校を休んだ日も、おそらく下痢を理由にしないで嘘をついてごまかしたように想う。

9月の終わり頃か10月に入っていたか?・・・この頃、だいぶ下痢の症状は和らいできていたものの、相変わらずその症状は数日おきに繰り返していた。学校が休みの日・・・日曜日か祝日だったか、それともこの季節は文化祭や体育祭が続いてその代休だったか・・・、ようやく貯まった小遣いを持ってレコード店へ。

もう狙いは定まっていた。

物静かそうなオジさんにもこの一週間ほど前に正式な予約ではないけれど、小遣いが貯まったら購入することを宣言しておいた(笑)。

<ユージン・オーマンディとフィラデルフィア・・・>

またも呪文のように胸裏で呟きながら、その盤が置かれているはずのラックに手を伸ばした・・・

「あれっ?」

・・・

「ああ、ゴメンなさい、これだよね」

・・・

「えっ?あ、ありがとうございます」

 

オジさんは、お目当ての盤を別にして取っておいてくれた。

ユージン・オーマンディ指揮、フィラデルフィア管弦楽団、ここに、アルトゥール・ルービンシュタインのピアノが加わっての演奏、ブラームス作曲「ピアノ協奏曲第2番」、1971年の録音で1975年発売のLPレコード盤だ(上の写真)。実際には発売になって1年後くらいに手にしたことになる。

 

付属の解説書によれば、指揮者のユージン・オーマンディは録音当時72歳、ピアノのアルトゥール・ルービンシュタインは84歳、いずれも東ヨーロッパ出身で第1次世界大戦を経てアメリカ人として演奏活動を続けることになったという。ルービンシュタインに至ってはルービンシュタインが10歳までブラームスも生きていたという。

 

よく高年齢の演奏家たちの演奏を、技術的なキレよりも円熟した云々などと評したモノを読んだり聞いたりするけれど、実際にはそんなことではなくて、技術の高さを含めて言い尽くせないほどの超越したものを常に感じる。

この手に入れた盤からもそうで、ブラームスはピアノ協奏曲を2曲しか創っていないのだけれど、明らかに「陰・陽」の「陽」を表現しているのがこの「第2番」の方だ。それを、オーマンディもルービンシュタインも若々しく明瞭な音を引き出して、時に力強く、しかし、奥深い響きと演奏運びは穏やかな高揚感をもって終始奏で、あるいはコントロールしている。ここに交わるフィラデルフィア管弦楽団の響きは広大な奥行と拡がりを魅せつけて、もっと言えば、大宇宙にでも解き放れたような無限な解放感を届けてくれる。・・・同時に、古典派の形式と構造的な音楽を踏襲しながらもその旋律やオーケストレーションはロマン派を代表するブラームスならではの新鮮な風がこの「ピアノ協奏曲第2番」からも感じられて、オーマンディとルービンシュタインとフィラデルフィア管弦楽団の演奏がこれにも適って、まさに名演・名盤に思える。

・・・当時の下痢気味の高校生コゾウが感じていた記憶を土台に現代の私の感想を上乗せしてはいるけれど、感じ方はそう違ってはいないはずだ。・・・同じ人間で、きっと大した進歩もしていないだろうから(苦笑)。

 

この名演・名盤、もしかすると、このストレス性胃腸炎(?)を治すには効果があったのかも知れない。なぜなら、このLPレコード盤を聴いてから後々、下痢の症状はほぼ治まったのだった。嘘のようなホントの話(たまたまなのだろうけれど・・・(笑))。

ユージン・オーマンディ指揮、フィラデルフィア管弦楽団、ピアノがアルトゥール・ルービンシュタインの演奏で、ブラームス作曲「ピアノ協奏曲第2番」・・・好い~薬です。

・・・なんてね(笑)。