今日の一曲 No.33:ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」

「今日の一曲」の第33回目。今回は、ラフマニノフ作曲「ピアノ協奏曲第2番」にふれながら、あれこれと書かせていただく。

 

第2回目(2016年10月4日)で、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」を取り上げたときに、ヴァン・クライバーンのLPレコード盤とともに紹介した。この盤のB面には、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」が、リッツ・ライナー指揮、シカゴ交響楽団、ピアノ演奏はもちろんヴァン・クライバーンのものが収録されている。実は、今回のラフマニノフもこの盤を紹介しながらと思ったりしたのだが、悩んでもみて(笑)、これとは違うもので・・・。

 

当時、中学1年生だった。

両親からの月々のこづかいを前借りしてクラシック音楽全集・全25巻を中学校のすぐ近くにあった本屋さんで注文。この話は第1回目に事の成り行きを詳しく書いたので、この程度に治めておこう。

今日、ご紹介のLPレコード盤はこの全集の中の1枚だ(上の写真)。

 

この盤も、A面がチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」で、B面にラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」が収録されている。ラフマニノフの音楽を初めて聴いて知ったのは、この盤からだ。

 

チャイコフスキーの方は、インパクトある衝撃的な魅力を感じながらも全曲通して聴くまでには少し時が掛かった話を第2回で載せたが、対称的に、ラフマニノフは直ぐに身体が受け入れてくれたかのように、聴きやすかった。初めて聴いてからすぐに何度もこの盤に針を落として聴いていた記憶がある。

 

前回、ボロディンの旋律の美しさに触れたが、それとは明らかに異なる種類の美しさで、人間の心情・内面を揺るがすような美しさがラフマニノフの旋律からは感じるのだった。加えてアレンジだ。和音(コード)のその音の重なり具合が新鮮で、旋律とともに胸をキュンとさせられた。

・・・と、またまた、当時、中学生だったガキの感想を、現在の私が代弁してのことだ(笑)。

 

このLPレコード盤に収録されている演奏は、チェコの名門・名手の大集合ってところだろうか・・・、イールジー・ワルドハンス指揮、ブルノ国立フィルハーモニー管弦楽団、ピアノはミルカ・ポコルナの演奏のものだ。

 

中学生から後々も同曲のLPレコード盤やCDを何枚か手にしてきたが、この盤に収録された演奏がもっともテンポが様々に動く演奏に思える。

前に突っ込み過ぎるギリギリまでテンポが速くなっていく部分があったり、こんなにも後ろに引っ張るのかというギリギリまで間を保つ部分もあったりの演奏だ。女流ピアニストならではというのは多少語弊があるかも知れないが、このテンポの揺れ動きとともにあるピアノの音色と響きはとても愛らしく感じられて心地よい。

 

おそらく、最初に聴いたラフマニノフがこの演奏だったので、ラフマニノフの音楽が先に書いた通りの感じに余計に思えたのかも知れない。中学生時代にこれが耳に入ってきた音ならば、更に、その思春期の心情も余計に揺らしたのだろう。でも、繰り返すが、心地好かった。

たとえ、ろくでもない中学生のガキが聴いていたのだとしても(笑)。

 

冒頭にふれたヴァン・クライバーンのは、これよりも2年ほど後の中学3年だったか高校入学した頃だったかに自宅近所のレコード店で買ったものだ。まったく余計なものを削ぎ落としたような演奏で、あくまでも技巧的なものが際立つ演奏だ。これはこれで好さを十分に感じる。

 

ただ、こう思いたいのだよ。

ラフマニノフの音楽に触れる順番は、これでよかったのではないかと・・・ね。

 

人間の心情の揺れ動きを、その美しい旋律と音の重なり、愛らしい演奏で届けてくれたラフマニノフ作曲「ピアノ協奏曲第2番」、イールジー・ワルドハンス指揮、ブルノ国立フィルハーモニー管弦楽団、ピアノがミルカ・ポコルナの演奏のものを、「今日の一曲」として紹介させていただいた。