今日の一曲 No.23:F・シュミット作曲「ディオニソスの祭り」(パリ・ギャルドより)

「今日の一曲」の第23回目。『イチ推し』の一曲を紹介する。

 

紹介の音楽もその時代も、それにまつわるエピソードも、時系列に順序良くは並んでおらず、あちらこちらと飛び回りながらで恐縮ではあるが・・・、今回もそうなる(汗)。

 

第11回目では、指揮者ミュンシュとパリ管弦楽団から「フランスの音」について、第18回目では、現代音楽作曲家の作品への興味から「吹奏楽曲」を、第19回目では、「フランス式とドイツ式のクラリネット」に触れた。

 

これらのことが重なってのことかと思う。この曲と出会うべくして出会った感じさえする。大げさか・・・(笑)。

 

今回、第23回目では、フランスの吹奏楽曲として『イチ推し』の曲を紹介させていただく。

F・シュミット作曲、「ディオニソスの祭り」、通称「パリ・ギャルド」こと「ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団」の演奏のものだ。

作曲者と楽曲、演奏者、そのすべてが「フランス」だ。

 

吹奏楽ファンなら御存じの曲ではないだろうか。

 

20世紀初頭のフランスの作曲家フローラン・シュミットが、「パリ・ギャルド」による演奏を想定して書き上げた曲、それが、「ディオニソスの祭り」だ。

ギリシャ神話に登場する「酒の神・ディオニソス」の話をモチーフにしたらしいが、ユーモアさ、静寂さ、熱狂ぶりが描写された作品だ。まぁ、このあたりの蘊蓄は専門家に任せよう。

 

私的には、楽曲が表現する音たちに、「フランス語言語の発音やリズム」、「フランスの文化」の匂いを感じる。

この楽曲を、フランスを代表する吹奏楽団「パリ・ギャルド」が演奏することで、特に、木管楽器群は、クラリネットもフランス式、低音木管楽器の一つもドイツ式のファゴットではなく、フランス伝統のバスーンで演奏されている。まさに、「フランスの音」が鳴り響いてくる音楽だ。

今、興奮して書いているのが分かるかな(笑)。

珍しく楽曲や演奏者の紹介が長めだぞ(笑)。

 

さて、この曲との出会いは、「今日の一曲」シリーズをここまで読まれてきた方は想像がつくかと思う。社会人1年目、2年目に痛い目に遭った後に廻ってきた幸運で、まだまだ若く未熟者ではあったものの、徐々に社会人として自信を持ち始めた頃だ。充実した日々が感じられるまでになっていた。

 

はじめは、吹奏楽コンクールで優秀な成績を受賞した学校や団体の演奏を収録した当時はLPレコード盤があって、その中で、「ディオニソスの祭り」という曲を知った。楽曲について調べると、なんと、「フランスもの」ではないか。当時までに培った音への興味と一致したのだった。

が、コンクール用に演奏されたものは、曲の一部をカットしたものだということを、少し経ってから知った。で、カットされていない全曲収録のものをレコード店をウロウロと探し廻るが、なかなか見つからない。現在のようにインターネットなるものがあれば、直ぐに、手が尽くせたであろうに・・・、残念。この時は手にすることができなかった。

ラジオで聴いたり、その後もコンクール演奏の「ディオニソスの祭り」を聴く機会はあったが、レコード盤を手に入れることはできなかった。

ただ、「パリ・ギャルド」の演奏のものがあることが調べて分かり、何がなんでも、これを聴きたいという想いだけは増していた。

 

時はあっという間に経過する。時折、レコード店に立ち寄る度にチェックはしていた。もう、そのほとんどは、LPレコード盤ではなくてCDが店頭に並ぶようになっていた。

お目当てのLPレコード盤ではなくその復刻版としてCDになった盤が2003年に出された。それを、ようやく手に入れた(上の写真)。10年以上が経過していたというわけだ(笑)。

 

2003年というと、病気はすでに発症していた。

暗くならないで欲しい。現在は元気なのだから。

何とか身体をごまかしながら新しい仕事にチャレンジしていた・・・つもりであったが、限界は目の前で、社会からの最初のリタイヤが待ち受けていた。

 

それでも当時、このCDを聴きながら(バッハの「トッカータとフーガ」なども収録されている)、そして、すべてがフランスの音で奏でられた「ディオニソス祭り」を聴いてはワクワク出来たように思う。

日々の充実感を感じながら若さに任せて仕事をしていた頃の記憶とも重ねていたのかも知れない。

このときに、自分自身にも、身近な周囲の人たちの想いにも、もう少し深く寄り添うようにしていたなら、厄介な病気を招くこともなかったのかも知れない。現在から振り返ると、そう感じる。

 

さらに時は進んで、現在。変わらずこの曲は、大のお気に入りの一曲だ。何度もクドイが(笑)、なんてたって、「フランスの音」が詰め込まれているのだから!

 「フランス」と「独創性」と「吹奏楽」を堪能するなら、『イチ推し』の一曲であることは間違いない!