今日の一曲⑭:ELP(エマーソン・レイク・アンド・パーマー)の「展覧会の絵」

「今日の一曲」の第14回は、「展覧会の絵」を紹介する。

クラシック音楽ファンなら、原曲(ピアノ演奏曲)を作曲したムソルグスキーやオーケストラ・アレンジをしたラヴェルの名前がすぐに出でくるところだろうが、今日、ここで紹介するのは、イギリスのロック・バンド「ELP」(エマーソン・レイク・アンド・パーマー)のものだ(右の写真)。

 

Keith Emerson(キース・エマーソン)はシンセサイザー、キーボード奏者、Greg Lake(グレッグ・レイク)はヴォーカル、ギター、ベースの奏者、Carl Palmer(カール・パーマー)はドラム奏者で、略称「ELP」と呼ばれたこのバンドは、当時、「プログレッシブ・ロック」というくくりもあったが、これに留まらずロック・ミュージックを代表するバンドだ。私的な捉え方だが・・・。

「展覧会の絵」が収録されたこのLPレコード盤は、1971年3月26日、ニュー・キャッスル・シティホールでのライヴ録音とジャケットには記されている。

ライヴ録音にしては音がとてもクリアに感じる。

 

「展覧会の絵」という曲自体は、ムソルグスキーが作曲した原曲のピアノ演奏曲を、小学生の高学年くらいの時だったか、テレビで視聴して、ピアニストのテクニックとその迫力あるピアノの音に演奏終了と同時に「すげぇーっ!」と声を上げて感動した記憶がある。ん〜、誰の演奏だったかを覚えていないのが残念。気転の利くガキではなかったのでこんなものだ(笑)。

この後すぐに、ラヴェルによるオーケストラ・アレンジがあることも知ったのだったが、こずかいを貯めて、LPレコード盤を買いに行ったのは中学生になってからだ。カラヤン指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のだ。

 

で、本題に入ろうか(笑)。・・・ホント、いつも前置きが長いな。

実は、この「ELPの展覧会の絵」は、高校1年のときに同クラスの友人からもらったものだ。 

彼は中学生時代からロックバンドを同級生らと組んでベースを弾いていた。クラシック音楽も好きだったらしいのだが、なかなか周囲にクラシック音楽を話題に話す者がいなかった。そこで、クラシック音楽の話相手として彼のお目に叶ったのが私であったのだろう、彼とは音楽の話しかしたことがない。

ある時、話の流れは想い出せないのだが、彼にチャイコフスキーの「1812年大序曲」を、FMラジオからエアチェックして録音したカセット・テープを貸したことがあった。ところが、彼はその録音されたテープの一部を誤って消去してしまったのだった。1秒間くらいだ。

彼は正直に打ち明けてくれて、私もやむを得ないことと受け止めた。が、彼は何度も何度も詫びるのであった。同時に差し出された1枚のレコード盤があった。それが、「ELPの展覧会の絵」。

「えっ?」

もちろん、テープを消去されたことにではない。差し出されたレコード盤のことだ。

テープが消去されたのはこちらにも若干の否はある。カセット・テープを知らない世代の方に説明は難しいが、カセット・テープの側面には小さなツメがあって、このツメを折っておけば消去されることはなかった。でも、彼はそんなことは一言も言い訳にしない。それと、このレコードが大切なものであることは彼の様子から明白だった。

「お前なら、この演奏をきっと楽しんでくれるだろうと思って」

 といった意味のことを言われた記憶がある。

あとはよくは憶えていないが、それ以来、このレコード盤を所有しているのは私なので、結局は受け取ったということだ。

 

現在もレコード盤の状態は良好だ。ご機嫌な音で聴くことができる。もちろん、演奏は面白すぎる!楽しすぎる!

 

当時のことだから、ギターケースを持って歩いていれば大抵の大人達は不良だと決めつけていたような時代だ。私に至っては当時少々素行に問題がなかったわけでもないが(笑)、彼は違う。ロックに狂っていたが決して不良ではない。不良なら、こんな風に詫びたりはしない。

 

ともかく、お蔭で、「展覧会の絵」を、原曲のピアノ演奏、オーケストラ・アレンジに、ロック・アレンジ・・・という具合に、順序良く聴くことにもなった。

彼が差し出してくれた1枚のレコードは、他人と誠実に心を通い合わせることの大切さも一緒に届けてくれたように思う。「今日の一曲⑭」は、そんな、ほろ苦くも温かい想い出とともに、「ELP」の「展覧会の絵」を紹介させていただいた。